第14話 強敵!マウントイエティー
若い男女が山道を歩いていた。天気はよく、山から見える景色も素晴らしかった。
「いい所ね。」
「そうだろう。穴場だ。最近、山登りにおすすめの山ということで話題になったんだ。」
「でも、あまり人がいないわね。」
「それがいいんじゃないか。静かで。」
そんな話をしているうちに」、鬱蒼とした林に中に入った。
「ちょっと怖いところね。」林の中は薄暗く、静まり返って不気味な雰囲気があった。
「ああ、でもここを抜ければ頂上だ。素晴らしい光景が広がっているよ。」
その時、鳥が羽ばたく音がした。一同はぎょっとして身を寄せあった。
「フッフッフ。」林の中に声が響き渡った。
「だ、誰だ。」青年が叫んだ。すると怪人が目の前に出現した。
「きゃあー。」「うあー。」叫び声がして、山々をこだました。
喫茶アミーゴでシゲさんが新聞に目を通していた。そしてある記事に目を止めた。
「失踪事件か。また大具須山か。知らないところだな。」
「シゲさん。今頃?ネットではもう噂になっているわ。」真由が言った。
「何て?」
「神隠しだろうって。あの山には昔から修験者が修行していたそうよ。神聖な山らしいわ。」
「新聞じゃあ、5人目らしいな。」
「ネットじゃあ、10人以上とも言っているわ。」真由が両手の指を出して言った。
その話を翔太と蓮が聞いていた。
「おい、大具須山って聞いたな。」蓮が声を潜めて言った。
「ああ、あの辺は人も住んでいないところだ。もしかしたらネクストの仕業かも。」翔太が言った。
「ちょっと調べてみるか。」蓮は真由が聞いていないことを確認しながら言った。
「ああ、真由に見つからないようにな。明日朝早く出発だ。」翔太が言った。
「ちょっと2人とも、何をこそこそ話しているの!」真由が翔太と蓮の様子に気付いて言った。
「ないもないよ。」2人は同時に言うと、席を離れて出て行った。
「あやしい。」真由はつぶやいた。
次の日の朝、翔太と蓮は喫茶アミーゴを密かに抜け出してバイクを走らせた。幸い、真由には気づかれていないようだった。2人はほっとしていた。
(真由がついてきたら、危ないからな。)
しかし前方にバイクが止めっているのに2人は気づいた。そこには真由が腕組みをして立っていた。翔太と蓮はバイクを止めて、お互いに顔を見合わせてバツの悪そうにした。
「やっぱりね。大具須山に行こうとしていたのね。2人だけで。」真由が言った。
「いや、危ないから。真由はアミーゴで待っていた方がいいと思って。」翔太が言った。
「大丈夫よ。これでも立花藤兵衛の孫よ。ショッカーネクストの影があるところには行くわ。2人ともついてきて!」真由はバイクにまたがると走り始めた。
やがて大具須山のふもとに着いた。
「ここからは歩きだ。」蓮がリュックサックを背負って歩き始めた。翔太と真由もリュックサックを背負うと後をついて行った。山道には人影はなかった。最初は景色が素晴らしい開けた場所を通っていたが、次第に薄暗い林の中に入って行った。
「何か出そうだわ。」真由が不安そうに言った。
翔太と蓮も不気味な雰囲気を感じていた。すると急に、
「フッフッフ。」笑い声が聞こえてきた。
翔太と蓮は身構えた。すると怪人が目の前に現れた。戦闘員も後ろに控えていた。
「出たな!ショッカーネクストの改造人間!お前が若者をさらっていたんだな。」翔太が言った。
「よくわかったな。俺はマウントイエティー。お前たちも捕まえてやる。」
「何を!お前たちの企てをつぶしてやる。来い!」蓮が叫んだ。マウントイエティーが合図をすると、戦闘員が3人を囲んだ。そして殴りかかってきた。翔太と蓮は向かってくる戦闘員を倒していった。
「小癪な!」マウントイエティーが翔太に向かってきた。翔太がパンチを放つが、怪人は平気な顔をして翔太にパンチを浴びせてきた。後ろから蓮がキックをしたがびくともしなかった。
「そんなものが効くか。ひねりつぶしてやる。」マウントイエティーは翔太につかみかかってきた。翔太は飛び上がって離れた。
「変身!クロスファイヤー!トオッー。」ジャンプしてクロスファイヤーに変身した。
「貴様はクロスファイヤー!いい所で会った。俺が倒してやる!」マウントイエティーはつかみかかってきた。クロスファイヤーはパンチで攻撃したが効果はなかった。怪人の体が固い筋肉で覆われているためだった。マウントイエティーはクロスファイヤーの両腕をつかむと振り回して投げ飛ばした。
「ドーン。」大きな音がしてクロスファイヤーは地面にたたきつけられた。
「クロスファイヤー!」蓮が驚いて叫んだ。クロスファイヤーはダメージを受けてなかなか立ち上がれないようだった。
「フッフッフ。お前は俺には勝てない。死ね!」マウントイエティーがクロスファイヤーに近づいていった。そして首をつかむと締め上げた。
「ううっ。」クロスファイヤーは苦しんでいた。マウントイエティーのパワーで首がへし折られそうになりながらも、クロスファイヤーは全身を炎で包んだ。あまりの高温にマウントイエティーはクロスファイヤーを放り出しように投げた。また地面にたたきつけられたクロスファイヤーは深いダメージを受けつつも、首を押さえて何とか立ち上がろうともがいていた。マウントイエティーがさらに攻撃を加えようと近づいてきた。非常に危機的な状況だった。クロスファイヤーはなんとか立ち上がり、
「ファイヤーバースト!」右手を突き出して火炎を浴びせた。マウントイエティーは少しひるんだが、それでもクロスファイヤーの方に一歩一歩、近づいてきていた。クロスファイヤーは下がったが、やがて崖の近くまで追い詰められた。
「それで最後だ。」マウントイエティーがクロスファイヤーにつかみかかろうとした。クロスファイヤーは崖っぷちで飛び上がり、空中で一回転した。そして体をひねってスピンをかけて、必殺技を出した。
「クロスファイヤーキック!」マウントイエティーは腹にキックを受けたが、何とかこらえた。しかし衝撃でがけが崩れて下に落ちていった。
「危なかった。」クロスファイヤーはつぶやいた。しかしマウントイエティーを倒せてはいなかった。
ダメージを受けた翔太を蓮は肩をかして歩いていた。山はもう日が暮れそうになっていた。
「ここで野宿するしかないか。」蓮が言った。
「あ、そういえば、この付近にお寺があるらしいわ。もう誰も住んでいないけど。そこへ行ってみましょう。」真由が言った。
3人が荒れ果てた寺にようやく着いた。もう日が落ちていて暗くなっていた。3人は恐る恐る寺の中に入って行った。すると戸が急に開いた。3人はビクっと驚いてその方向を見た。
「誰かね?君たちは。」和尚が立っていた。厳しい顔をして3人をじっと見ていた。
「や、山登りに来たのです。だけどもう日が暮れてしまって困っているんです。ここに止めてください。」真由が言った。
「こんな山奥に?」和尚はいぶかしがりながらも、
「いいだろう。そちらの離れを使いなさい。山寺のことで何もないが・・・」そう言うと、戸をぴしゃりと閉めた。3人は顔を見合わせた。
荒れ果てた山小屋のような離れで3人は地図を見ていた。
「明日は頂上に行ってみよう。やはりショッカーネクストはいた。奴らの基地がここにあるに違いない。」蓮が言った。
「ああ、そうだ。だがあの怪人は厄介だ。技が通用しない。」翔太が言った。
「確かに強敵だ。あの怪人は林にいたから、そこを迂回して行こう。」
「そうね。怪人もダメージを負っているはずだから、来ないかもしれないし。」真由が言った。その時、急に、
「しっ!」翔太が口に指を当てた。そしてゆっくりと戸を開けて外を見た。和尚が辺りを見渡して寺を出て行くのが見えた。
「あの和尚さん、怪しくない?」真由が言った。
「ああ、こんな夜中にどこに行くのだろう。」蓮が言った。
「それにここは人が住んでいなかったはずよ。」真由が言った。
「じゃあ、最近、ここに来た?」翔太が言った。
「するとショッカーネクストの一味か?」蓮が言った。
「十分考えられる。和尚には見つからないように、明日早く出発しよう。」翔太が言った。
次の日、朝早く3人は音を立てないように注意しながら寺を出た。そして迂回路を通って山頂を目指した。
しかしその様子は監視カメラでとらえられていた。山頂の基地でマウントイエティーはモニターを見ながら不気味に笑っていた。
「こんどこそ、捕まえてやる。クロスファイヤーなどひねりつぶしてやる。フッフッフ。」
山頂付近では戦闘員が警備している姿が見えた。もう入り口は近いようだった。
「真由はここで待っていてくれ。2人で行ってくる。」翔太が言った。
「え、いやよ。私も行く。」真由が言った。
「もしもの時は山を下りて助けを呼んでくれ。いいな。」蓮が強く言った。それを聞いて真由はうなずくしかなかった。
翔太と蓮が見つからないように山頂に向かって行った。真由はそれを岩影から見守っていた。
「なんか変だわ。」真由は違和感を覚えていた。周囲を見渡すと2人を監視カメラが追いかけているようだった。
(いけない。罠だわ。)真由は飛び出して2人に教えようとした。しかしその前に戦闘員が立ちはだかっていた。真由は、
「罠よ!逃げて!」そう叫んだ。しかし2人の耳には届いていないようだった。戦闘員は真由に近づいてきた。真由は2人が心配だったが、後ろを向いて逃げていった。戦闘員が追いかけてきていたが、真由は岩陰に隠れてなんとかやり過ごした。
(罠だったわ。2人をなんとか助けないと。)真由は隠れていたところを出て道を歩き始めた。すると前方には戦闘員が待ち構えていた。
「い、いけない。」真由は後ろに逃げようとしたが、後ろにはあの和尚が立っていた。前方の戦闘員はゆっくり真由の方に近づいてきた。後ろの和尚は走って真由の方に近づいてきた。
(もう、だめ。)真由が目をつぶって頭を抱えて固くなった。
走ってきた和尚が真由に近づいて彼女を捕まえるかと思いきや、真由を通り過ぎて戦闘員の方に向かって行った。そして戦闘員につかみかかっていった。
ゆっくり目を開けた真由は目の前の光景に驚いた。和尚は群がる戦闘員たちを次々に倒していた。彼はショッカーネクストではなかった。真由は叫んだ。
「和尚さん!あなたは誰なの?」
和尚は右手でつかんだ戦闘員を投げ飛ばしながら言った。
「ショッカーネクストの敵、そして人類の味方。」
そしてまた向かってきた戦闘員を投げ飛ばした。
「私は一文字隼人。日本を守る仮面ライダー!」和尚が叫んだ。
「あなたも改造人間なの?」真由が訊いた。
和尚は僧衣を脱いだ。そしてジーンズ姿の男になった。
「お見せしよう!」和尚は戦闘員が飛び掛かろうとするなかで、
「変身!トウッー。」ジャンプすると変身ベルトが回り、仮面ライダー2号が現れた。その赤い腕と足が力強く動き、すべての戦闘員たちを強力なパンチとキックで倒した。
「いっしょにいた青年はどうした?」仮面ライダーは訊いた。
「山頂に行ったわ。そこにショッカーネクストの基地がある。」真由が言った。
「無謀なことを!トウッー。」仮面ライダーは飛び上がった。そしてサイクロンにまたがった。それで山頂に向かって行った。
翔太と蓮は山頂に向かった。厳戒な警備だったはずだが、戦闘員に見つからず基地の入り口から入ることができた。基地の中も戦闘員が歩いていたが、何とかやり過ごして中央の部屋に入ることができた。
「ここが本部か?」蓮が辺りを見渡しながら言った。機器は多く並んでいたが、誰もいなかった。
「おかしい。何か変だ。」翔太が言った。その時、急に上から檻が降りてきた。
「あ、危ない。」翔太が叫んで逃げようとしたが、すでに遅かった。檻は翔太を捕まえていた。蓮も一緒に檻につかまってしまった。翔太は檻を破ろうとしたがびくともしなかった。
「こうなったら・・・。」翔太は変身ポーズをとった。すると檻から高圧電流が流れ、翔太を感電させた。
「ううっ。」翔太は片膝を折って、苦しがった。高圧電流はすぐに止まった。しかし翔太のダメージは軽くなかった。
「大丈夫か?」蓮が駆け寄って声をかけた。
「ふっふっふ。罠にはまったな。」ドアが開き、戦闘員とともにマウントイエティーが入ってきた。
「それでは変身できまい。じっくりなぶり殺してやる。」マウントイエティーが戦闘員に合図を送った。また檻に高圧電流が流れ、翔太は苦しみだした。
「死ね!クロスファイヤー!」マウントイエティーが叫んだ。その時、いきなり
「待て!」という声が叫び渡った。
「誰だ」!」マウントイエティーが叫んだ。
「俺だ!」と言って仮面ライダーが飛び込んできた。戦闘員を次々に倒して、翔太と蓮の檻に近づくと、檻を破壊して助け出した。
「お、お前は!」マウントイエティーが驚いて叫んだ。
「俺は仮面ライダー2号。いくぞ、ショッカーネクストの怪人め!」
「何を!叩き潰してくれる!」マウントイエティーは仮面ライダーに殴りかかった。仮面ライダーは受け止めて反撃したが、マウントイエティーはびくともしなかった。ならばと、仮面ライダーはマウントイエティーをつかむと、ジャンプして天井を突き破って外へ出た。
翔太は、
「変身!クロスファイヤー!」同じくジャンプして変身すると外に出て行った。
仮面ライダーはマウントイエティーと戦っていたが、その強靭な体に手を焼いていた。しかしクロスファイヤーが現れ、攻撃に加わった。
「ファイヤーパンチ!」「ファイヤーキック!」炎の力でパワーを増した攻撃に、さすがのマウントイエティーのダメージを負っていた。そこへ仮面ライダーがジャンプして、
「ライダーキック!」を放った。さらなるダメージでマウントイエティーは片膝をついた。
そこへ間髪を入れず、クロスファイヤーはジャンプをすると一回転して、
「クロスファイヤーキック!」でとどめを刺した。マウントイエティーは倒れこむと、大爆発を起こした。
ショッカーネクストの基地を破壊して、和尚と翔太、蓮、真由が顔を合わせた。
「あなたが仮面ライダー2号でしたか。」蓮が訊いた。
「そうだ。仮面ライダー2号、一文字隼人だ。ショッカーネクストを追っていて、和尚に化けて山に潜り込んで探っていた。君たちが来るとはな。おかげで強敵のマウントイエティーを倒すことができた。」
「いえ、僕たちの方こそ、危ないところを助けてただ来ました。獏たちは・・・」翔太が言おうとするの隼人は遮った。
「君たちのことは聞いている。猛から。」
「マスターを知っているのですか?今どこにいるのですか?」真由が尋ねた。
「彼もまた、ショッカーネクストを追っている。みんなで力を合わせて、ショッカーネクストの野望をくじくのだ。」そう言うと隼人は右手を出した。翔太と蓮と真由も右手を出して握った。
クロスファイヤーと仮面ライダー2号の活躍で強敵のマウントイエティーを倒し、ショッカーネクストの基地を破壊した。しかしショッカーネクストの野望は果てしなく続いていく。だから彼らはまた戦いを続けていくだろう。