仮面ライダークロスファイヤー

昭和ライダーの熱き戦い

第1話 仮面ライダー、再び!

温かい日差しを浴びて、数台のバイクが走っていた。やがて一軒の喫茶店の前に止まり、若者たちが楽しそうに中に入って行った。

「マスター、コーヒー!」若者の一人が言った。

「おお、来たな。今、うまいコーヒーを入れてやる。」マスターは笑顔で答えた。

若者たちは席に座り、楽しげに談笑し始めた。その様子をマスターはうれしそうに見つめていた。

「みんな、楽しそうだ。」カウンターに座る常連の男がマスターに話しかけた。

「ああ、あれを見ると心が和む。」

「そうだ。若いころを見るようだ。そんな気分がする。」

2人が話していると横から注意する声がした。

「マスター、ちゃんとしてください。手が動いていませんよ。シゲさんもマスターの邪魔をしないでくださいよ。」若い女性が言った。

「ああ、すまない。真由ちゃん。今、コーヒーを入れているところだからね。」マスターはバツが悪そうに言った。

「それにしても真由ちゃんはしっかりしているなあ。おやっさんに似てきたよ。」シゲさんは言った。

「何、言ってるんですか。そりゃ、孫ですけれど。全然、似てないわ。」真由は怒ったように言った。

「コーヒー、入ったよ。」マスターが言った。真由はお盆にのせて運んで行った。

「マスター。真由ちゃんも大変だ。あの年でこの店を切り盛りしないといけないしね。」シゲさんが言った。

「ああ、おやっさんが亡くなった後、どうしてもこの店をたたむのに反対した。俺も自慢のコーヒーを入れているが、あまり役に立っていないしな。」マスターは言った。

「そんなことはないさ。おやっさんは喜んでいるさ。」シゲさんは片隅に飾られている写真の方を見た。それはおやっさんこと、立花藤兵衛の写真だった。微笑みながらこの喫茶アミーゴを見守っていた。

おやっさん。この店は昔と同じように若者が集まってきます。いつまでも見守ってください。)マスターは写真を見てそう思った。

「最近、誘拐事件がよく起きているなあ。」若者の一人がスマホのネットニュースを見て言った。

「ああ、俺たちと同じくらいの年の人がさらわれている。身代金の要求も何もなく、消息不明になっている。」

「何のためかな?」

「さあ、でも気をつけないと、俺たちもさらわれるかもよ。」

「脅かすなよ。はっはっは。」

やがて夜になり、若者たちの多くは帰っていった。しかし奇妙なことにそれを遠くから見張っている車があった。満月が出ており、いつものように静かな夜を迎えようとしていた。

店の客は一人だけになっていた。彼は必死にパソコンに打ち込んでいた。

「マスター、コーヒーお替り。」

「翔太、今日はがんばるなあ。」マスターがコーヒーを出して言った。

「ええ、大学の研究発表がすぐですから。ツーリングに行っていたら予定が狂っちゃった。」翔太が笑いながら言った。

「まあ、しっかりやれよ。若いうちにしかできないことがあるんだからな。」マスターがグラスをふきながら言った。

「まあ、今日はここまでにしよう。明日、また来るよ。」翔太はコーヒーを飲み干して立ち上がると、すぐに店を出て行った。

「ふふ。待っているよ。」マスターは笑いながら言った。

 

しばらくしてマスターの耳に若者の悲鳴が聞こえた。確かに翔太の声のようだった。マスターは顔色を変え、すぐにエプロンを脱ぎ捨てて、

「ちょっと、出てくる。」と言って店を飛び出していった。

「えっ。マスター!どこ行くの?」真由はびっくりして声をかけたが、マスターは振り返ることもなく走って行った。真由もあわてて外に出た時にはマスターの姿はなかった。

「一体、どうしたのかしら。急に飛び出して行くなんて。」

マスターは声をする方向へ走って行った。そこには一団の男たちがいた。

「何をしている!」マスターが叫んだ。男たちの中に気を失っている翔太の姿があった。

「お前たち、翔太をどうするつもりだ。」マスターが翔太の方に行こうとした。それを男たちは前に立ちふさがった。

「何のつもりだ。お前たちか。若者を誘拐しているのは!ただでは済まさんぞ!」マスターが叫んだ。一団の男の中から、リーダーらしい男が出てきた。目つきの鋭いその男はステッキを片手に、不気味に微笑みながら言った。

「ふふん。我々に歯向かうとはいい度胸だ。お前に恐怖を教えてやる。」リーダーの男は右手を上げて合図した。すると男たちの姿が変わり、黒ずくめの戦闘員の姿になった。そしてリーダーの男も軍服姿になっていた。ステッキを両手に遊ばせながら、

「ふっふ。驚いただろう。お前には死んでもらう。」と言った。

「何者だ!」マスターが叫んだ。

「冥途の土産に教えてやろう。我々はショッカーネクスト、世界を狙う秘密結社だ。私はガザン将軍だ。さあ、やれ!」ガザン将軍は合図をした。戦闘員は一斉にマスターに飛び掛かってきた。

「ふっふっふ。普通の人間ごときが敵うものか。我々はすべて改造人間なのだからな。」ガザン将軍はつぶやいた。しかし向かっていった戦闘員は次々にマスターに倒されていった。ガザン将軍は驚いてその様子を見ていた。

「こいつめ!」ガザン将軍は向かってきたマスターにステッキを振り上げた。マスターはそれを避けたが、次々に繰り出す将軍の攻撃に少しずつ押されていった。そしてあわやステッキが当たる瞬間、後ろに一歩下がってジャンプした。それは人間業と思えない大きなジャンプで、塀の上にマスターは飛び乗っていた。ガザン将軍と戦闘員は上を見上げた。

マスターは塀の上に立ち上がると、

「ライダー、変身!」と掛け声をかけた。腰に変身ベルトが現れて、勢いよくジャンプした。変身ベルトは風を受けて回転し、やがて仮面ライダーに変身した。1回転して地上に降りて、ファイティングポーズをとった。

「か、仮面ライダー!」ガザン将軍は驚いて叫んだ。

「ん?俺を知っているようだな。翔太を返せ!」仮面ライダーは言った。

「やれ!やれ!」ガザン将軍は叫んだ。戦闘員は向かって行くがすぐに倒されていった。その状況に歯がゆそうに見ていたが、次第に不利になっていく状況に、

「引け!」ガザン将軍は叫んだ。戦闘員は離れていき、その一人は翔太を担いだ。

「待て!」仮面ライダーは叫んだ。ガザン将軍は右手で前の地面を指した。すると大きな爆発が起こり、辺りは煙に包まれた。

仮面ライダーは両手を振り回して敵を追ったが、煙が晴れたころには何もいなくなっていた。

「逃げられたか!」仮面ライダーは辺りを見渡しながらつぶやいた。

 

「マスター、最近、店に出てこないの。何をしているのかしら。」喫茶アミーゴで真由がつぶやいた。翔太がいなくなってから、マスターはたまに顔を見せるだけになっていた。シゲさんは心配そうに真由を見ていた。

マスターこと、本郷猛は翔太を探してバイクで走り回っていた。しかしその行方はようとして知れなかった。

「どこに行ってしまったんだ。翔太!」バイクを降りてヘルメットをとった猛は、空に向かってつぶやいた。彼には言い知れない不安が渦巻いていた。

(早く見つけださねば。手遅れになる前に。)

 

翔太は目を覚ました。そこは手術台の上だった。両手、両足を拘束されて身動きができなかった。翔太は必死にもがいていた。

「目覚めたかね。黒須翔太。よくぞ、ショッカーネクストに来てくれた!」気味の悪い声が聞こえてきた。

「誰だ!僕を呼ぶのは?」

「私は首領だ。ショッカーネクストは世界を征服する秘密結社だ。我々は君を必要としている。だから君をここに連れてきた。」

「僕を放せ!」

「いいだろう。我々の仲間になったら放してやる。」

「いやだ。お前たちの仲間なんかになるものか!」

「そうか?それは遅かったな。」首領の声が響くと、周囲の白衣の男たちが翔太の体にかぶせていた布をとった。それを見て翔太は驚愕した。体も手足も人間のものでない、赤い異形のものに変わっていた。あまりのことに声が出せなかった。

「君はすでに改造人間になった。怪人ファイヤーホッパーだ。もし仲間になるというなら放してやろう。だが拒絶すれば、脳改造も行う。そうなれば今までの記憶は失われ、ただショッカーネクストの忠実なしもべとなる。はっはっは。」首領は笑って言った。

翔太はそれを聞いて叫んだ。

「い、嫌だ。やめろ!」

「仲間になるか?」

「それは絶対に嫌だ。誰がお前たちの言うことなんか聞くものか!」翔太は叫んだ。

「そうか。それなら脳改造を行う。それ!」首領の声が合図をすると、白衣の男たちが近づいてきた。翔太は、

「やめろ!来るな!」翔太は手足をばたつかせて暴れたが、拘束されており身動きができなかった。目の前のドリルが回り、頭の方に近づいてきた。翔太は恐怖で目を見開いていた。

その時だった。急にドリルの回転が止まり、照明が消えた。暗闇の中で白衣の男たちが右往左往していた。やがて手術室のドアが開いて、白衣の男たちが出て行った。外では警報音が鳴り響いていた。

「翔太、大丈夫か。」足元で声をした。翔太がその方向を見ると仮面ライダーが顔を覗かしていた。翔太はその声に聞き覚えがあった。

「マ、マスター?」

「そうだ。マスターだ。ここから逃げるぞ。」仮面ライダーは翔太の体がすでに改造されているのを見て、一瞬、動きが止まったようだったが、翔太の手足を拘束しているベルトを壊した。翔太は体に違和感を覚えながらも、なんとか手術台から降りて立ち上がった。翔太の体は見かけ上は普通の姿に変わっていった。

「行くぞ!」仮面ライダーが声をかけて、翔太の体を抱えるように外に出て行った。廊下は警報音が鳴り響いていた。

「逃げるぞ!」戦闘員が2人を見つけた。仮面ライダーは向かってくる戦闘員を倒しながら、出口に急いだ。出口付近には一台の真っ赤なバイクが置かれていた。

「動かせそうだ。これに乗って逃げろ!」仮面ライダーは翔太に言った。

「はい。でもマスターは?」

「俺のことはいい。ここは俺が防ぐからアミーゴに向かうんだ。」仮面ライダーはそう言うと翔太を真っ赤なバイクに乗せた。翔太はバイクをすぐに走らせた。

 

「逃がすな!追え!」戦闘員たちが次々に向かってきた。仮面ライダーは次々に倒していった。すると奥から黒い色をした怪人が現れた。

「ダークスパイダー、行け!」ガザン将軍の声が聞こえた。ダークスパイダーは仮面ライダーに向かってきた。パンチを繰り出してきたが、仮面ライダーはそれを避けて反撃した。パンチを受けてダークスパイダーは後ろに下がったが、口から糸を吐き出した。それは酸の糸だった。仮面ライダーは身をひるがえしてそれを避けた。その糸は岩に当たって煙が出ていた。

(ここでは不利だ。外へ出るぞ。)

仮面ライダーは飛び上がった。そして天井を突き破って外に出た。怪人や戦闘員もその後を追ってきた。そこは開けた場所で、激しい戦闘を繰り返した。

その様子を陰から見ている人物がいた。それはガザン将軍だった。彼は大きな機械をもって仮面ライダーを狙っていた。気付かれないように少しずつ進んできた。

「もう少しだ。・・・よし!」ガザン将軍の持つ機械から光線が放たれた。それは仮面ライダーをとらえた。仮面ライダーは動きが止まり、苦しみ始めた。

「な、何だ!これは!」仮面ライダーは叫んだ。

「改造人間分解光線だ。これでお前は終わりだ。もうすぐお前に体は分解し始める。」ガザン将軍は言った。仮面ライダーはなおも苦しそうだった。

「ふっふっふ。死ね!仮面ライダー。」ガザン将軍が笑いながら言った。その時だった。

「待て!」周囲に大きな声が響いた。ガザン将軍やダークスパイダー、戦闘員たちが周囲を見渡した。すると丘の上にバイクにまたがった1人の改造人間がいた。

「ファイヤーホッパー!それにあのバイクはレッドストーム。いつの間に!」ガザン将軍が叫んだ。それは赤く輝いていた。新しい仮面ライダークロスファイヤーの誕生だった。

クロスファイヤーはレッドストームを走らせてガザン将軍に向かって行った。大きな改造人間分解光線を持っていた将軍はなんとかそれを避けたが、機械ははね飛ばされて地面にたたきつけられて破壊されてしまった。仮面ライダーはようやく自由になり向かってくる戦闘員を倒していった。

ダークスパイダーは酸の糸を吐いて、クロスファイヤーを攻撃した。クロスファイヤーはそれを避けてレッドストームで向かって行った。ダークスパイダーは跳ねられて地面に転がった。

「今だ!」仮面ライダーは飛び上がった。

「ライダーキック!」仮面ライダーのライダーキックがダークスパイダーにさく裂した。ダークスパイダーは吹っ飛ばされたが、まだ何とか立ち上がっていた。

「おのれ!」

後ろからガザン将軍がステッキを振り回して近づいてきていた。

「逃げるぞ!」仮面ライダーはジャンプして新サイクロンにまたがった。2人はショッカーネクストの基地から脱出していった。

2人の姿を追いかけながらガザン将軍は悔しそうに言った。

「逃がしはせぬぞ。きっと捕まえてやる。それができなかったら抹殺だ!」

 

新しい仮面ライダークロスファイヤーは誕生した。しかしガザン将軍をはじめとするショッカーネクストの魔の手は翔太と猛に迫っている。はたして彼らの行く手はどうなるのか。